千代女の俳句の舞台?

松任の歩道

これは、今から11年前の平成13年、石川県松任市(合併して、現在は白山市)の歩道で撮影した陶板。

松任は、江戸時代の俳人・千代女のふるさとだ。

もちろんこの朝顔は「朝顔に つるべ取られて もらい水」に因んだもの。
こうした陶板が市内で見られるから、私はてっきり、この句は松任で詠まれたものと思い込んでいた。

ところが、この有名な句は、港区三田のお寺が舞台となっていると「港区観光データベース」に載っているではないか。

早速、そのお寺に行ってみた。

お寺の紹介の前に、千代女の簡単な紹介をしておこう。

千代女

加賀千代女(元禄16・1703-安永4・1775)は、現在の石川県白山市松任の表具師の家に生まれた。

17歳の時、蕉門十哲の一人・各務支考がこの地を訪れた際弟子入りを申し入れ、その時に才能を支考に認められている。

18歳の時、金沢に嫁ぐが夫の病没により1年余りで家に帰り、生涯を北国の小さな街で過ごす。
街道沿いの千代女の家には、各地の俳人が次々と立ち寄り、多くの句を交わしている。

千代女はその生涯で1700余の句を残しており、特に「朝顔につるべ取られてもらい水」の句は、当時から広く知られていたという。

地図

さて、千代女が朝顔の句を詠んだというお寺の場所を地図で見てみよう。

お寺の名前は「薬王寺」、番地で言うと港区三田4丁目8-23。
この地図の右下のところに見える。

地図の上のほうに見える太い道路は、第一京浜。

第一京浜と並行して台地沿いを走る道は、修験者などが開いた古い道といわれる。

薬王寺

このお寺が薬王寺。

港区観光データベースには次のように紹介されている。

「加賀千代は、諸国歴遊の途中に薬王寺の井戸水が霊水であるとの噂を耳にし、ここへ立ち寄りました。千代はここで、『朝顔に釣瓶取られて もらい水』(朝起きて外へ出てみると、井戸の釣瓶に朝顔がからみついて咲いているので、それをちぎって水を汲むには忍びないと思い、そのままにして近所からもらい水をした、の意)と詠みました。その井戸は現在も残っています」

墓地の一角の井戸

早速、井戸を探しに境内に入ってゆくと、墓地の端に井戸を囲った小屋がある。

この写真の左奥だ。

井戸全景

これがその井戸だが、井戸には覆いがかぶせられ、内部の様子は見ることができなかった。

句碑

近くに、千代女の句を彫った句碑もある。

しかし、「ここは句の風景に似合わない」というのが、私の第一印象だった。

釣瓶

ある朝、毎日使っている井戸に水を汲みにゆくと、釣瓶につるが巻き付いていた。

「つるを切るのがかわいそう」なのでもらい水をした、という風景がここからは浮かんでこない。

千代女が、ここで水を汲んでいる姿が想像できないのだ。

「千代女は霊水を訪ねてここに立ち寄った」と港区観光データベースにはある。

この寺に泊まったのでなければ、井戸を見たのは朝ではないだろう。

すると、もらい水をしたのは本人の体験ではなく、伝聞かもしれない。

もちろん、実体験がなくても句を作ることはできるのだが。

そこで、千代女のふるさとの「千代女の里俳句館」のホームページを見て、句の周辺を調べることにした。

ところが、朝顔の句がどこで詠まれたのか何も書いていないし、江戸に行ったとも書かれていない。

私と同じような疑問を持った人もいるようで
「徒然想」というブログには、「千代女の里俳句館」の話として、「千代女の記録については伝聞が主で、正確な記録はほとんど残っていない。年表を見る限り、千代女が江戸に行くだけの時間はない」と書かれていた。

そう言われると、薬王寺には港区の教育委員会の案内板もない。

区のお墨付きをもらっている様子が見えないから、本当なのかどうか少し不安になる。

私は、あの有名な句が地元・三田で読まれたものであって欲しいと思うのだが、そのためには確たる根拠を知りたいところだ。

世の中には様々な情報が氾濫している。
それだけに公的機関が出す情報は、正確であって欲しい思う。

様々な説がある場合には、少なくともその出典を明らかにすべきだろう。

今回の「港区産業観光ネットワーク」の情報は、区役所の担当部課が管理している。
区の教育委員会と連携を密にして、情報の充実に努めて欲しいと思い、「三田で詠んだ説」の出典について質問してみた。

このあと、どんな返事が返ってくるのか、そして観光情報の記述がどのように変わるのか、楽しみにしている。

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プロフィール

め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

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