厚岸・国泰寺~蝦夷地の三官寺


史跡・国泰寺あと

北海道東部の厚岸町にある国の史跡・国泰寺跡。

幕府が蝦夷地に建立した3つの寺のうちの一つだ。

三官寺といわれる寺は、西から伊達市有珠の善光寺(浄土宗)、様似の等澍院(天台宗)、そして最も東にあるのが国泰寺だ

国泰寺が作られたのは1804年。

西洋列強の艦船が日本近海に現れるようになる一方、ロシアが通商を求めてたびたび南下する中、幕府は蝦夷地を天領にして警備を強めていく。

そのような状況の中、警備や商売で蝦夷地に来て亡くなった武士や商人を弔う寺も僧もなかったことなどから、幕府は蝦夷地に寺を作った。

今の国泰寺

これは、現在の国泰寺の写真。宗派は臨済宗だ。

入り口のガラスには、徳川の葵の紋が見える。

門前には「11代将軍家斉公 開基」とも書いてあった。

国泰寺のことを釧路市の図書館で調べたのだが、実に面白い。

住職は幕府による任命で、任命にあたっては、江戸城「帝鑑の間」に列し、後ろに旗本400-500人が居並ぶ中、10万石の格式をもって徳川将軍に目通りを許されたのだという。

それだけ、幕府がこの政策を重視していたということだ。

明治の国泰寺

明治時代の国泰寺の写真が、近くに建てられている「厚岸町郷土館」にあった。

これを見ると、木造のかなり大きな建物だったことがわかる。

しかし、この地は極寒の地、冬の寒さは筆舌に尽くし難かったに違いない。

歴代住職

明治までの歴代の住職の名前があった。

ほとんどが相州とあるから相模・今の神奈川県から、一人は野州・つまり下野(栃木)の臨済宗の末寺から派遣されている。

どのような思いで、この地まで来たのだろうか。

任期はおよそ7年で、任期が近づくと江戸に向けて「まもなく無事に任期も終えようとしている。体調は十全とはいかないので、どうか後任を考えていただきたい」という旨の文書を送った記録も残っている。

徳川幕府が任命した9人の住職のうち3人はこの地で亡くなり、国泰寺の墓所には、その墓もある。

三官寺の配置

国泰寺の布教範囲は、現在の十勝、釧路、根室、それにクナシリ、エトロフの北方領土も含まれる広い地域だった。

現在の北海道の4分の1以上の範囲にもなる。

廻勤

住職は、任期の間に受持ち範囲を1回、巡ることになっていた。

そして、住職の下で働く僧侶も3人いて、彼らは毎年任地を回り、国家、将軍家、藩主の安泰、それに海上安全や豊漁などを祈ったのだという。

今と違って車もなく、海路が中心だっただろうが、大変な苦労に違いない。

日鑑記

これは、初代の住職が任命された1804年から1863年までの寺務記録が記された「日鑑記」。

寺が取り交わした書状や公文書、それに食べ物など日常の暮らしに関することまで詳しく記されている。

厚岸郷土館の人に、「日本地図を作った伊能忠敬の記録はありませんか」と尋ねると、「日鑑記の記述にはない」との話だった。

後で調べると、伊能忠敬が、測量のため蝦夷地に入ったのは1800年、国泰寺ができる4年前のことだった。

伊能忠敬の作った地図には、この付近の海岸線の正確な地形が描かれている。

今から200年も前に、伊能忠敬は、この地を歩いていたのだ。

(伊能忠敬は、蝦夷地に入った第一次測量では、知床の南・別海町の西別まで来たところで、引き返している。そのことについては、また後日紹介したい)

近藤重蔵

そして、国泰寺ができようという時期に足跡を残した、もう一人の人物の肖像画も展示されていた。

近藤重蔵だ。

説明

近藤重蔵が択捉島に「大日本恵土呂府」との木柱を立てたのも、国泰寺が建てられる少し前のこと。

歴史上の人物が、この地で生き生きと活動していたことを想像すると、感慨深い。


オオシマザクラ

国泰寺の境内にあるオオシマザクラの老木。

天保元年(1830)に石巻から移植されたと伝えられている。
この地で桜の花見をしたい思いで、移植したのだろう。

国泰寺にはこのほかにも120本余りの桜の木があり、今では花見の名所となっている。

花が咲くのは例年5月の中下旬で、日本でも一番遅い時期の花見として知られている。

それだけ、冬が長く厳しいということなのだ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
スポンサードリンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR