学校になった台場、無人の台場



台場築造図

幕末、幕府が海防のために江戸湾に築造した台場は、途中で工事を中止したものも含めて8基。

そのうち現在も残っているのは、お台場海浜公園にある第3台場、その西にある第6台場だけとなっている。

今日は、その第6台場と、現在は台場小学校として利用されている「御殿山下台場」跡を紹介したい。

初めは「御殿山下台場」跡だが、この台場は海上ではなく、陸続きの場所に築造されたものだ。

台場小

品川区東品川1丁目にある台場小学校。

校門の横に、ここが台場であったことを示す記念碑が建っている。
この石垣は、台場で使われていたものだ。

輪郭は残っている

記念碑の説明には「台場の輪郭は道として残っている」と書かれていた。

確かに、学校が建つ敷地は周囲の家より少し高くなっていて、そこが台場であったことをうかがわせる。

このあたりまで昔は海だったのだと思いながら、細い道を歩いてみた。

海の面影が残る

台場小学校の周辺を歩いてみると、昔の海の面影が、僅かだが残っていた。

北品川橋のたもとに「品川百景 品川浦とつり船」と書いた看板があり、釣り船や遊覧船が係留されている。

海を埋め立てた後も、当時の海の一部が、こうして水路として残っていた。

鯨塚

近くの利田神社の横には「鯨碑(塚)」が残っている。

説明には
「1798年、暴風雨で品川沖に迷い込んだ鯨の供養碑。
鯨の体長はおよそ16メートル余り、江戸中の評判となり11代将軍家斉が浜御殿で上覧するという騒ぎとなった。

東京に現存する唯一の鯨碑である」と紹介されている。

遙か沖合まで埋め立てが進んだ今、昔の歴史を語り継ぐ貴重な資料だ。

昭和31年の品川沖

次に、海上に残る2つの台場のうちの一つ・第6台場の話に移る。

これは、昭和31年の台場の海。

真ん中に第6台場が写っている。

左は第3台場で、まだお台場の埋め立ては全く始まっていない。

第6台場の右手に写っているのは第2台場。

海上交通の妨げになるとして昭和36年に撤去され、今はない。

第6台場・6月

これは6月に、レインボーブリッジから撮影した第6台場。

こうして橋の上から見るか、船から見ることしかできない。

立ち入り禁止

第6台場は、隣の第3台場から250mほど離れていて、形は変形5角形。

植物や野鳥の宝庫で、学術的にも貴重ということで、保全のため「立ち入り禁止」となっている。

今の時期は、木々がうっそうと茂って、少々不気味でもある。

4月

これは2か月余り前、4月に写したもの。

まだ葉が繁る前で、台場の中の様子が少しわかる。

枝に、沢山の鳥がとまっているのが見える。

小さな浜

台場が築かれてから約160年が経過した。

石垣は、まだこうして残っている。

私はレインボーブリッジから第6台場を眺めると、吉村昭の小説「漂流」を時折、思い起こすことがある。

それは、1785年、嵐にあって八丈島の南300キロの無人島・鳥島に漂着し、12年余り後に自力で脱出することに成功した土佐の船乗りの話で、実話がもとになっている。

道具がない中で、食べ物や水をどう確保するのか、健康をどう維持していくのか、脱出するための船をどのようにして作るのか、

その主人公は、この台場よりはるかに悪条件の島で生き延びた。

自分がこの第6台場に漂着したと仮定して、道具も何もなくて生きていけるだろうかと考えて見るのだ。

「火もおこせない、釣針も作れない、木をどうやって伐ったらいいのか、どうやったら船を作ることができるのか」

江戸時代と比べて文明は進歩したが、一人一人の生きる知恵・生き延びる技術は、昔と比べて進化したとは言えない。

むしろ退化したのではないだろうか。

科学技術が発達すればするほど、私たちは、中身がなんだかわからない複雑なブラックボックスに囲まれて暮らすようになっている。

故障もなく作動している限りは何の問題もないが、何か不具合が起きると、普通の人では手に負えなくなってしまう。
原発も、そうしたものの一つなのだろう。

そうした中で、人生哲学を含めて生きるための力、技術をどう身に着けてゆくのか、ますます大事になってきているはずだ。

第6台場を見ると、時折そんなことを考える。
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め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

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