ドナルド・キーン展~「私の感動した日本」を見て


ポスター

北区飛鳥山博物館で開かれている「ドナルド・キーン展」を見に行ってきた。

キーンさんは日本文化に魅せられ、2008年には文化勲章を受章。
今年3月には、日本国籍を取得して日本に永住することを決めたことがニュースで大きく取り上げられた。

キーンさんは、旧古川庭園を望む北区西ヶ原のマンションに暮らしている。
江戸時代から桜の名所として知られる北区の飛鳥山でこの展覧会が開かれるのは、そんな縁があるからだ。

館内

館内は、沢山の人が訪れてかなりの混みようだった。

展示は、キーンさんの生い立ちから、これまでの歩みが紹介されている。
特に、日本の有名作家との交流の様子が窺える手紙や写真が、私には興味深かった。

館内の資料の撮影ができなかったので、これまでのテレビ番組の中で紹介された写真などで、展示の雰囲気をご紹介したい。

源氏との出会い

ドナルド・キーンさんは1922年(大正11)6月18日生まれ、というから昨日でちょうど90歳を迎えた。

アメリカ・ニューヨーク市で貿易商の家庭に生まれ、16歳の時に飛び級でコロンビア大学に入学。

日本文化との出会いは1940年(昭和15)のこと。
古本屋さんでアーサー・ヘイリー訳の源氏物語を見かけたのがきっかけだった。

「2冊で49セントと安く、お買い得だったから」ということだ。

海軍日本語学校

大学で日本文学などを学び、その後、米海軍の日本語学校に入学。

先の戦争では、情報将校として捕虜の尋問などに当たり、日本人とは何かを考えさせられたという。

捕虜になった人の中には、戦後も文通などで交流を続けた人もいて、手紙の一部も展示されていた。

キーンさんの手紙は、「漢字かな交じり」の見事な文章で綴られていて、「帰る」という字も、旧字体の「歸」という字で書かれていた。

谷崎との交流

キーンさんは、「源氏物語の世界を自分の目で確かめてみたい」との思いから、昭和28年京都大学に留学。

下宿で、のちに文部大臣となる永井道雄と知り合い、生涯の友となっている。

また、日本を代表する作家とも、この留学期間中に交流を深めていった。

展示会場には、当時京都に住んでいた谷崎潤一郎夫妻から送られた「キーン先生送別の画帳」が展示されていた。

画帳には、谷崎夫妻からの惜別の歌が書かれていた。

「つつじもえ 時鳥啼き 牡丹さく 京の五月を君去らんとす  潤一郎」

「君行くを 惜しみて啼くか 賀茂川の 河原の千鳥ちちりちちりと  松子」

こうして歌で心を伝えるという日本文化に触れるなど、京都での生活は、キーンさんにとって上質の時間が流れていたことを窺わせるものだった。

狂言を演じる

昭和31年、留学を終えるに当たり「送別狂言会」が開かれ、キーン氏は「千鳥」の太郎冠者を演じた。

話は、酒屋から酒をただで手に入れようとする太郎冠者と、させまいとする酒屋の主人のやり取りを謡ったものだ。

「酒屋の主人役は武智鉄二(映画「白日夢」の監督として知られている)が務めてくれ、観客には谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、松本幸四郎(八代目)など、そうそうたる顔ぶれがそろっていた」と説明に書かれていた。

三島由紀夫と

三島由紀夫が、自決する二日前(昭和45年11月23日)に書いたキーンさんあての手紙も展示されていた。

「小生 たうとう名前どほり 魅死魔幽鬼夫になりました」との書き出しで始まり、「文士としてではなく武士として死にたい」との内容が書かれている。

日本と日本文学を愛するがゆえに、逆に作家たちから愛されたキーンさんの人柄が、このやり取りの裏に垣間見える。

日本文学史

キーンさんは、「日本文学は世界的に価値があるもの」と様々な場で語っている。

日本文学の根底に流れるものは「もののあわれ」-それは「移ろいゆくもの・はかないものに美を感じる心」だという。

そして「奥の細道」の芭蕉の句
「夏草や 兵どもが 夢の跡」の句を引き合いに出して、

自然や山川草木は変わってゆくが、残るのは人間の言葉。
「文学の言葉は残るのです」と語っている。

日本に永住する

キーンさんは今年3月、日本国籍を取得し、日本に永住することを決めた。

キーンさんは「今回の大震災でも多くの日本人が自分のことだけを考えるのではなく、危険にあった人を助けに行き、略奪のようなこともなかった」

「何かの役に立ちたいと思う日本人について、アメリカ人の多くは”日本人はいい人間だと思っている”。そのことを、私は日本人としてうれしく思っている」と、NHKの100年インタビューで語っていた。

漢字の名刺

まだキーンさんの著作の中で読んだのは、日本文学史の中の俳諧について記した分冊のみ。

キーンさんが魅せられた「源氏物語」もまだ読んでいないので、こんなふうに書いていると叱られてしまいそうだ。

日本人となったキーンさんの著作を参考に、是非死ぬまでには源氏物語を読了したいと思う。
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め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

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