「水交社」跡と東京メソニック協会


地図


現在東京タワーの建っているあたりは、戦前はどんな様子だったのか。
昭和12年の地図に、現在の施設や、地名を書き入れてみた。

東京タワーの左上には、前にも紹介した会員制の高級料亭「紅葉館」があるのがわかる。(9月30日、「金色夜叉、名場面の舞台は東京タワー」)

さらにその左手に「水交社」と書いてあるのが見える。

「水交社」とは、旧日本海軍の士官クラブの名称だ。
明治9年、築地に置かれたが、関東大震災後の昭和3年に、今の飯倉2丁目交差点近くに移ってきた。

海軍士官のクラブ

「水交社」の建物は、尉官以上の士官の給料から天引きした資金で建設された。

ここでは、少尉候補生らが世界一周の遠洋航海に旅立つのにあたって洋式のテーブルマナーを仕込まれたり、海軍大臣から壮行の辞を受けたりした。

また昭和18年6月に行われた山本五十六元帥・国葬の列はここから出発したのだという。

そして、戦後「水交社」は空襲に焼け残ったため、米軍に接収された。

そして接収が解除された後、土地、建物とも8千万円で、国から「財団法人東京メソニック協会」に払い下げられた。
(この「財団法人東京メソニック協会」とは一体どんな団体なのかは、後ほど紹介する)

この接収を巡っては、海軍将校の親睦団体である「水交会」が建物の返還を要求する訴訟を起こし、十年越しの民事裁判が続けられたが、結局「水交会」側の実質敗訴の形で和解になった。

現在の様子

「水交社」があった場所は、現在はこんな様子になっている。

東京タワーから手前にある建物は、「財団法人東京メソニック協会」が所有するビルだ。
白い方の建物は、かつてイトーヨーカ堂の本社が入居していた。

手前の黒っぽく見える建物が「東京メソニックビルディング」だ。

メソニックビル

これは「東京メソニックビルディング」の入り口にある協会のシンボルマーク。

メソニック(masonic)とは「mason」=石工(いしく)という言葉と関連する言葉だ。

つまり、ここは 「mason」=「石工」の自助組織から発展した、自由、博愛、平等の精神を掲げる親睦団体フリーメイソンの日本における根拠地なのだ。


このシンボルマークに描かれているのは、コンパスと定規。
かつてこの組織が石工職人のギルドであったことを物語り、
中央の「G」は、神(GOD)と幾何学(geometry)を意味しているのだという。

フリーメイソンはその後、主として社会的な影響力のある人々の間で、仲間の相互扶助や交流を行う団体として拡大を続け、1717年にはロンドンに本部が設立された。

現在世界中で500万人の会員がいるといわれ、なかでも、アメリカには200万人におよぶ会員がいるという。

過去、会員として著名な人はモーツアルト、アメリカ初代大統領のワシントン、GHQの司令官マッカーサーなど多士済済。

日本人では哲学者の西周、政治家の鳩山一郎などの名があげられている。

ステンドグラス

これはビルの側面を飾るステンドグラス。

何も知らない私のようなものから見ると、とても謎めいたものに見える。

一体「財団法人東京メソニック協会」とは、どのような理念でどのような活動をしているのだろうか。

協会のホームページを見ると、次のように書かれている。

「東京メソニック協会は慈善を目的とした公益法人として、1955年に設立されました。
設立の母体となったのは日本に於けるフリーメイスンの団体であり、フリーメイスンの起源は16世紀から17世紀初頭と言われ、世界最古最大の友愛団体の一つであります。
 財団の事業は、目の不自由な、あるいは他の障害を持った貧しい児童への医療提供、あらゆる難病や自然災害に苦しんでいる人々への援助を行い、また、同様の志を持つ他の団体への助成を継続的に実施することであります。
私達、東京メソニック協会一同は、フリーメイスン精神の下に上記の慈善事業を行うことを使命とし、人類の福祉向上に貢献することを願っています」

ステンド

ところが、こうした格調高い理念・活動も、メソニック協会における儀式などに秘密の部分が多いため、広く一般に知られてないのが現状だろう。
入会の儀式、自分以外のフリーメイソンの名前を口外してはいけない等の決まりがあるのだという。

私は、知人が東京に来ると、東京タワーの案内のついでにこの不思議なステンドグラスを紹介することがある。

すると、多くの人が、予想通りの反応をし、興奮する。

映画「20世紀少年」に出てくる「ともだち」のマークを思い起こすのかもしれない。
あるいは、周囲に、フリーメイソンの人が見当たらないことも大きいのかもしれない。

情報不足と秘密保持のきまりによって
どこか得体のしれない団体という印象を持ってしまいがちだ。


フリーメイソン=秘密結社=陰謀という連想ゲームから脱しきれない人は、少なくないのではないか。

私自身、以前フリーメイソンに関する本を1冊読んだだけ。
しかもその本がどれほどの真実を書いているのか不明だ。

そして、財団法人東京メソニック協会については、ホームページやネットに乗っている以上の情報がない中で、正しい理解ができたとは言いにくい。

むしろ、依然として「理解不能の団体」だといったほうが正しいだろう。

異なる歴史、文化、伝統の中で生まれてきたものを理解することは、本当に難しい。

そして「正しく理解すること」だけでなく、「正しく理解してもらうこと」も難しいと知っておくことも大切だと思う。

いま、世界中で起きている紛争も、そんなことが原因となっているのも、あるに違いないのだから。
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プロフィール

め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

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