二つの五重塔  幸田露伴 その2


天王寺の五重塔跡があるのは、日暮里駅の南改札口からそれほど遠くない。
谷中霊園のなかにある派出所の近くだ。

五重塔跡

ここにあった五重塔は、総欅作りで、高さが34.18m。
事件がある前までは、関東にあった塔で最も高いものだった。

そして、フェンスで囲まれた五重塔跡、碑の横に3枚の写真が飾られている。

在りし日の姿

一番左の写真は、在りし日の五重塔の姿を写したもの。

燃えている姿

そして、その隣が猛火に包まれた塔の写真だ。

無残な写真

そして、もう一枚は、焼け落ちた後の無残な写真。

実は、五重塔は不倫の果ての心中で焼失してしまったのだ。

「震災、戦災にも遭遇せず、谷中のランドマークになっていたが、昭和32年7月6日、放火によって焼失した」と説明に書いてある。

心中した二人は、都内の裁縫店に勤める48歳の男と21歳の女。

今から55年も前のことだが、最近知った私には、心中した二人に今更ながら腹が立ってならない。

根岸堂

この立派なお宅は、根岸にある「ねぎし三平堂」。
昭和の爆笑王・故林家三平さんのお宅で、現在、曜日を決めて一般公開されている。

五重塔跡まで、歩いて行ってもそれほど遠くない。

三平さんが脳溢血で倒れたあと、リハビリのため奥さんの香葉子さんと五重塔跡まで何回か散歩したことがあったのだという。

「その時、三平さんは『新しく五重塔が再建されるといいなー』と語っていた」と
香葉子さんが「再建に向けた会合」の中で話したことがある。

「明治3年の五重塔の実測図も残っていて復元も可能」と説明には書かれている。

再建計画はどうなっているのだろうか。

五重塔焼失から50年後の平成19年には、谷中地区町会連合会が再建に向けて署名活動を始めている。
又、都議会でも、「知事から応援の心意気を示してもらいたい」という質問に対して、石原知事はこう答えている。

「谷中の五重塔は、幸田露伴の小説にも取り上げられまして、江戸の建築芸術の粋であったと思いますが、のっそり十兵衛といわれた名人の大工が建てたあの五重塔が、暴雨風の中でも揺るぎもせずに建っていたという、文語体でつづられた非常に美しい小説だったのを覚えていますが、こういったものを地元の熱意によって復元しようとする動きは、東京に新しい伝統をつくる上でも、大きな大きな意義があると思います。
 いずれにしろ、復元に当たっては、地元の人々が一体となり、熱意と工夫を凝らして取り組むことが重要であると思っております。
 都としても、東京の魅力向上につながるように、非常に大きく期待をしております」

どうやら「精神的な応援は惜しみませんよ」ということのようだ。
その後、再建に向けて大きく話が進んだのかどうか、今のところ続報は入手していない。

そして、都内の五重塔を調べていて、一つ大事なことに気がついた。

広重画

それは、かつて江戸四塔ととして知られた五重塔があり、その四つとは「寛永寺、増上寺、浅草寺、天王寺」の五重塔をさすというのだ。(増上寺の代わりに池上本門寺を入れる説もある)

広重の浮世絵に、増上寺五重塔が描かれている。手前の橋が「中の橋」、奥が「赤羽橋」だろう。

増上寺五重塔は、戦災で焼失してからすでに67年にもなる。
なのに再建に向けた動きが全くないのは、どうしたことだろう。

増上寺付属明徳幼稚園の卒園生として、少し気になるところだ。
再建に向けて何か動きがあるのか、後日、調べてみることにしよう。

長谷川一夫墓

ところで、この墓は昭和59年に亡くなった長谷川一夫のもの。
年配の方なら誰もが知ってる二枚目スターだ。

天王寺五重塔跡と道を挟んで反対側のところにあったので、思わず写真に収めた。

露伴の墓

一方これは、今日の主人公・幸田露伴の墓。
谷中霊園ではなく、池上本門寺にある。
今から3年前に撮影したものだ。

本門寺の五重塔

そして、これは池上本門寺にある五重塔。
この塔が建立されたのは1608年・慶長13年。

この塔も、震災・戦災を免れ、今日までその姿を長く残してきた。

露伴が、天王寺ではなく本門寺の五重塔の下で眠っているのは、何やら皮肉なことのように思える。



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
スポンサードリンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR