仏作って魂入れず

国立公文書館

千代田区の北の丸公園、
国立近代美術館の西隣りにある「国立公文書館」に行ってきた。

平成27年秋の特別展を見るためだ。

ここでは、膨大に保管する公文書の中からテーマを決め、興味深い企画展を定期的に開いている。

今回のテーマは「災害に学ぶ~明治から現代へ」

地震、火山、台風、豪雨など私たちの身の回りには危険がいっぱい、
明治以来の大災害に関わる公文書がて展示されていた。

「これは見逃せないぞ」、そんな思いで会場までジョグで訪ねた。

福井地震、列車転覆

三陸地震、関東大震災、伊勢湾台風、等々様々な災害にまつわる文書、写真などがあったが、

私が私が関心を持ったのは、福井地震に関するものだった。

今から40年ほど前、福井市に5年ほど暮らしていたからだ。

福井地震の発生は、昭和23年6月28日午後4時13分。

震源は福井平野の丸岡付近と言われ、マグニチュードは7.1。
震源に近いところでは、住家の全壊率が100パーセントという集落が多数出現した。

福井市でも全壊率は80パーセント超となった。

このはげしい揺れを受けて、気象庁は震度階に「震度7」を新しく加えたのだった。

鉄道の被害状況

これは、富山から敦賀までの鉄道の被害状況をまとめたもの。

わら半紙状の粗末な紙に、多大な被害状況が書き込まれている。

「九頭竜川橋桁 全部落下」 「客第603列車3輌脱線」 「駅舎倒壊」などの被害状況が生々しく記されている。

地割れ

地震当日、市内の映画館から外に逃げる途中、崩れてきた建物の梁の下敷きになったものの、かろうじて命を長らえた人がいた。

地震から四半世紀ほど経過した昭和50年ころ、その人から当時の様子を聞く機会があった。

その方は、火災が迫る中、死を逃れるために、自分の左腕を切断したのだった。

内閣府のホームページの「中央防災会議」の中に、福井地震に関する専門調査会の報告書があり、ご本人が書いた体験記が掲載されている。

梁(はり)に左腕が挟まれ、重たくで梁を持ち上げることができない。

救出しようとした人も、火災が近づく中、一人去り二人去りしてゆく。

「このままでは死んでしまう」
生きるために腕の切断を決断し、一人残った映写技師に腕を切断すると伝え、斧で切断したのだった。

映写技師の人は近くから斧を調達してきたが、自分自身で切断するようにと本人に斧を手渡した。

本人がやってはみたもののできず、結局、映写技師の人が介錯をする形で助勢したという。

体験記には、二人のそのときの切迫したやり取りが淡々とつづられ、今読んでいても胸が痛い。

その生々しい体験記は、以下のページをご覧ください。

第5章「被災者の記録から読みとく被災実態」 第3節「被災者の体験記」
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1948-fukuiJISHIN/pdf/08_chap05.pdf

この話を聞いて以来、身近なところに「車のジャッキ」を置いておかねばと思うようになった。

自らの腕を切断するという決断は、自分にはできないからだ。

水害で堤防決壊

さて、福井地震からほぼ1か月後の7月24日~25日、
福井市は、今度は集中豪雨にみまわれた。

堤防は、地震で亀裂が入っていたために決壊し、福井市内の6割が浸水してしまう。

福井県知事から内閣官房長官などに宛てた電報には

「九頭竜川堤防 各所決壊に瀕す 避難命令を出しつつあり」と記されている。

建築基準法制定

福井地震から2年後の1950年、建築基準法が制定された。

福井地震は、法律の制定にあたって大きな影響を与えたのだ。

内閣府のホームページには

福井地震から学ぶ教訓として、次のことが記されている。

「建造物の耐震改修の推進は、地震防災の基本である」

建築基準法は、それ以来今日まで、4回改正された。
建物を強固なものにして、より安全な社会をつくるためのはずだ。

それなのに、つい最近、横浜の大型マンションで、基礎の杭の一部が固い地層に届いていなかったという事実が明らかになった。

建設業者・販売業者ともに業界の大手だったというのも驚きの一つだった。

残念ながら
大きな災害から学んだ教訓が、生かされていないという言わざるを得ない。

まさに「仏作って魂入れず」とは、このことをいうのだろう。

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プロフィール

め組のかった

Author:め組のかった
「惑わず」の年から走り始めて四半世紀。還暦で初フルマラソンを走り、2010年には66キロのウルトラを制限時間ギリギリで完走。現在も月に200キロ以上を目標に走り込みながら、写真を撮っている。
このブログは、ジョギング中に撮り貯めた写真によるフォトエッセイを目指している。
タイトルは「おくのほそ道」をもじってみたのだが、さて、わかるかなあ?

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